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「判った。
じゃあバナナ、食べてみる。
あとはシナモンが欲しいな」
「バナナ、いいの?」
「うん、売れないと困るんでしょ」
「ありがとう。
感想は正直にお願いしますね」
嬉しそうに微笑んだ天川さんが
お皿を取りに行く姿を見ながら、
思わず溜め息をついた。
──お昼時の喧騒は、
お店の中を慌ただしくしている。
天川さんがカウンターの中から
それをすべて気遣っていることに
気付いて、何も言えなかった。
本当は、
ここにお昼を食べに
来たわけではなく、
愚痴を言いに来た。
別れ話をしたあの日から今日まで、
同じオフィスにいるのに
韮沢と一度も目が合わない。
別れたんだから
当然と言えば当然なんだけど、
でも、それにしたって。
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