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この程度の気持ちで
自分だけ甘えようだなんて、
都合が良すぎるよ。
考えながらも、自分では
どうすることもできない
心の中もやもやに耐えながら
俯いていると、
目の前に
ドーナツがふたつ乗った
お皿が静かに置かれた。
「すみれさん。
泣かないで」
「……」
ゆっくり
引っ込められた手を辿ると、
そこには天川さんが立っている。
「泣いて、ないよ」
「でも、泣いてたよ。
……心の中で」
彼は困ったように眉尻を下げ、
小さく首を傾げた。
言葉が出てこなくて、
彼のきれいな瞳を
じっと見つめてしまう。
ややあって、
天川さんはそっと屈んで
私に顔を寄せた。
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