いざ、尋常に入籍

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  ゚・*:.。..。.:*・゚・*:.。..。.:*・゚ 午後の仕事は 周囲の状況に目を配りながらも、 よけいな雑念が ちっとも入ってこなかった。 午前中は、 あれだけ集中力が 散漫になってたっていうのに。 天川さんが 出してくれたドーナツで 脳内にしっかり栄養が 行き渡ったから……とか、 可愛くないことが 頭を過ったりもするけれど。 “俺の前で 泣いてくれるのはいいけど、 今はちゃんと慰められない” 私にだけ聴こえるように 放たれた、天川さんの言葉。 静かで穏やかな低い響きの中に こっそり含まれた甘さは、 いやでも特別仕様の声だと判る。 ……韮沢に、 あんな甘ったるい響きで ささやきかけられたことなんて、 あっただろうか。 .
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