いざ、尋常に入籍

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  彼のきれいな瞳が、 疑わしげに私を覗き込む。 「……あの、すみれさん」 「う、うん」 「一応、言っておきましょうか」 「なにを?」 「──やめるなら、 これが最後のチャンスですよ」 「……」 とはいえ、 書類は全部天川さんの手の中で。 たかが紙切れ数枚とはいえ、 私のほぼすべてが ここに並べられているようなものだ。 「やめ、ないよ」 「本当に?」 「本当だよ」 決意のほどを示したくて 端的に言ったつもりが、 天川さんには逆効果だったらしく、 彼は困惑しながら溜め息をついた。 .
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