いざ、尋常に入籍

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  「俺、すみれさんに 無理強いはしたくないんですよ。 ……気にしないでみたいなことは 言ったけど、バツがつくことになるし」 「判ってるってば」 「本当に判っている人は、 相手の言葉を封じるために “判ってる”なんて言いません、普通」 「……」 めっ、とまるで子どもに 叱りつけるような目をして、 天川さんは私の意地を撫でつける。 書類がカウンターに置かれた。 かさりと乾いた音が、 やけに耳につく。 「なにかしこりがあるなら、 今ここで片付けておきましょう。 昼間の話の続きです」 「しこりって……私、別にそんな」 「元恋人の鼻を明かすことが 動機に入っているのに?」 .
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