いざ、尋常に入籍

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  すごくどうでもいい 思い込みにまで手を伸ばしながら、 怒りにどんどん 燃料を投げ込んでいく。 そろそろと、 天川さんの顔に視線を戻した。 彼はさっきと同じ 角度と距離で、 私を見ている。 「お付き合いより、 一足飛びに結婚まで 行ってしまった方が、 インパクトがあるでしょう?」 穏やかに語る天川さんは 無理に押し付けるでもなく、 あくまで私に選択肢を 提示する言い方をした。 なんで今の今まで、 言われるまで気付かなかったのか、 確かに彼の醸し出す空気は いい家庭で育った人間のそれだ。 このやわらかで 余裕のある空気に 巻き取られるささやかな 心地よさを── 私はもう、 いやというほど知っている。 .
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