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さらりと嫌味なく
お金の話を持ち出すあたり、
本当に上の階層で
生きてる人だと思う。
そんな人がいつも
給仕に精を出しているなんて、
意外だ。
「仕事上の契約みたいなものです。
今のご時世、
バツがひとつつくことくらい
何の足かせにもなりませんよ。
その程度には俺達、若いですし」
天川さんはやわらかく話すけど、
どんどん話がそちら側に
押されているのが判る。
「天川さん」
「はい」
「まだ、答えてもらってない。
……どうして私にその話を?」
彼が押してくるので、
私もかまわず押し返した。
これは恋愛を動機に
口説いているんじゃない。
結婚という契約の、
交渉だ。
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