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そんなこと言ったって、
廊下には人の気配がある。
いつ誰が気まぐれに
ひょいと顔を覗かせるか
判らないっていうのに。
「お前は、俺のだったろ。
違うのか。
俺、お前のことを
誰かと共有してたってのか」
「関係ないでしょ。
自分のこと棚に上げて、
気持ち悪い言い方しないで!」
「許さないぞ、そんなの。
星野」
……仕事中にみんなの前で
うっかり呼び捨ててしまわないように、
お互いにあくまで同僚としての
呼び方をしていた。
それでも2人きりの時には、
特別な響きを持っている
気がしていたことを思い出す。
──でも、
もう星野じゃないよ。
韮沢。
ぐいと腕を引かれ、
慣れた動きで
韮沢のもう片方の手が伸びてきた。
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