承認すべき既成事実

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  空いている方の手で、 自分の口唇をそっとなぞる。 肘で引っかかる バッグが腰に当たって、 のぼせそうだった意識が 引き戻された。 葵くんの口唇も 最初はちょっと 冷たかった記憶があるんだけど、 あれ現実に起きたことだったのかな。 思った瞬間、 拒絶したようになってしまった 自分の罪悪感も一緒に 引き戻されたので、 本当にさっき起きたことだと思い知る。 “そんな可愛い態度で、 俺をどうしたいの” まるで恋人にささやきかけるような、 葵くんの特別な声が甦った。 ──葵くんこそ、 私をどうしたいのだろう。 今さらながら、 そんな疑問が頭をもたげる。 .
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