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葵くんは私を好きだと言う。
そして、結婚した。
……離婚する、ために。
普通、好きだったら
離婚なんて
しないんじゃないんだろうか。
そこまで思考が及んだ時、
エレベーターの扉が
かこんと頼りない音を響かせ開いた。
フロアの通路にカーブのない
うちのマンションは、
エレベーターのドアが開くと
最奥の非常階段まで
一直線に見渡せるようになっている。
私の部屋のドアも
エレベーターホールから
そのまま見える──んだけど。
「……あ」
ひんやりとした夜のフロアに、
3つの声がこだました。
ひとつは、私。もうひとつは葵くん。
──残るひとつは、
私の部屋の前に佇んでいる、
韮沢……。
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