承認すべき既成事実

22/40
前へ
/40ページ
次へ
  葵くんは私を好きだと言う。 そして、結婚した。 ……離婚する、ために。 普通、好きだったら 離婚なんて しないんじゃないんだろうか。 そこまで思考が及んだ時、 エレベーターの扉が かこんと頼りない音を響かせ開いた。 フロアの通路にカーブのない うちのマンションは、 エレベーターのドアが開くと 最奥の非常階段まで 一直線に見渡せるようになっている。 私の部屋のドアも エレベーターホールから そのまま見える──んだけど。 「……あ」 ひんやりとした夜のフロアに、 3つの声がこだました。 ひとつは、私。もうひとつは葵くん。 ──残るひとつは、 私の部屋の前に佇んでいる、 韮沢……。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

307人が本棚に入れています
本棚に追加