307人が本棚に入れています
本棚に追加
「……心配した通りだ」
ちっと舌打ちでもしそうな
低い声で、
葵くんが小さく息をつく。
エレベーターの中で
立ち尽くしていたものだから、
一定時間経過した
扉が閉まっていく。
その瞬間、韮沢が
「えっ」と素っ頓狂な声を上げた。
思わず葵くんを見上げると、
彼は眉間に皺を作って
“1F”のボタンを連打している。
「あ、葵くん?」
「行こう。
すみれさん、悪いけど片付けは諦めて」
「え?」
「帰ろう。
あの人、しつこいです」
まるで唸るような声に、
思わず気圧される。
手を握る葵くんは、
さらにぎゅっと力を込めてきた。
.
最初のコメントを投稿しよう!