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目の前の
プライドの高そうな顔が、
悔しげに歪む。
韮沢のことを好きだった頃なら、
思わず私まで
泣いてしまいそうなほど、
痛々しい顔。
──けど、今は何も感じない。
触れてもいいと私が許せるのは、
もう韮沢じゃない。
じゃあ誰なんだ──と
自問が湧き立った瞬間、
韮沢がちっと舌打ちをした。
「ふざけるなよ。
俺はまだ、覚えてるぞ。
……こうしたらお前が喜んでたこと」
「……!?」
がば、と私の頭を
両手で抱えるようにして。
叫びかけた私の口を、
韮沢が強引に塞いできた。
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