289人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
韮沢とのことを思い出して
しくしく泣く時間は、
正直言うと彼に奪われた。
奪われた、なんて
言い方をすると
また被害者ぶってるみたいに
なってしまうけど、
それを望んだのは私だ。
葵くんは、優しい。
あんなに優しい人を、
私は生まれて初めて見た気がする。
というか、他にいるんだろうか。
好きだからって、
あんなに相手に何もかもを
譲ってもかまわない、
って顔をする人が。
……私が、
葵くんを利用してやろう、
なんてよこしまなことを
考えるような女だったら、
一体どうするんだろう。
思わず心配になってくる。
.
最初のコメントを投稿しよう!