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──一瞬、
視界が真っ暗になって
何が起きたのか判らなくなった。
ただでさえこの通路は
年中薄暗い。
明るい場所から
急にこちらに来ると
目が眩んでしまうくらい。
いつ眩暈を起こしたんだっけ、と
思った程度には
混乱してしまっていた。
そんな私の意識を
現実まで一気に引き戻したのは、
韮沢の口唇の感触。
腹立たしいほど
慣れてしまっていたそれに、
彼に馴染んでいた
身体が弛緩しようとする。
──違う、違うってば!
この人もう私の恋人でも
何でもない!!
甘くとろけそうになった
自分のすべてに赤信号を出して、
抗う手に力を込める。
けれどそれを許してくれない
韮沢に抱きすくめられて、
取っ組み合いのようになった。
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