428人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
庶民は庶民なりの
お手入れをしようと
化粧水を叩き込んでいると、
玄関で物音がした。
洗面所にかかっている
時計を見ると、
ゆっくりしていたせいか
もう23時。
葵くんが帰ってきたんだな、
と思いつつ顔を整えて
リビングを覗く。
するとそこに、
疲れた様子の
葵くんの背中があった。
「……おかえり、なさい」
おずおずと声をかけると、
葵くんは弾かれたように
顔を上げて振り返る。
「……あ、すみれさん。ただいま」
まだ起きてたんですか、
と溜め息混じりに言われた。
どこか突き放すような言い方に、
またあの気後れがやってくる。
.
最初のコメントを投稿しよう!