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「うん。
志緒、“オンブル”で
よく休憩するみたいだから、
本当に嬉しいって」
「よかった」
葵くんはにこり、と
微笑んではくれるんだけど。
……やっぱり、なにか違う。
胸の中に、ぐるぐると
重いものが渦巻いていく気がして、
でもそれを葵くんに
ぶつけるのはなにか違う気もして。
「……私、もう寝るね。
おやすみなさい」
まだ眠くなんかない。
だけど八つ当たりを
しないように、
無理やり笑って
そう言うしかなかった。
「……おやすみなさい、すみれさん」
葵くんの低くて
やわらかい声が、
意識を素通りしていく。
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