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その男は助走をつけマンションから飛び降りる。
お、おいそこ九階建て……
俺の心配を他所にそいつは足から地面に接触。
したのだが、
男はダメージを負うどころか音も立てずに着地した。普通なら骨折どころか死んでもおかしくないのにこの男は何事もなかったような顔をしている。
「また悪さしてるのか、陵木」
「……もぅ嗅ぎ付けて来やがったのか、国平進研の犬どもがよぉ」
「陵木」と呼ばれた男が右手を振るう。飛び降りた方の男のすぐ横の街灯が能力でばらばらになりそのまま地面に降り注ぐ。
「……危ないなー、俺じゃなかったらサヨナラだったよ今の」
鋭い破片を一辺に受けたとは思えない綺麗なままの姿でそいつは立っていた。
「チィッ!」
能力は効かないと判断したのか、陵木は素早い動きで殴りかかる。
「能力に頼らないとこは、誉めるべきところかな?」
陵木は男に拳を何度も突き出す。が、
全て寸止めの攻撃
この状況で陵木がそんなことをするような人間ではないことは、出会ってすぐの俺でもわかる。
つまり
「……相っ変わらず気分悪ィ力だなァテメェわよォ!!」
「わかってるならさっさと捕まってくれ、お前の力は危険すぎる」
「クソッ……!」
陵木は男から距離を取り、ジーンズのポケットから携帯電話を取り出した。
「……失敗だ、奴らもう嗅ぎ付けてきやがッた」
連絡行為……これは陵木が一人でことを起こしたことではないという俺の仮説を確かなものにさせる。
組織的な犯罪ということか、なら、なおさらなぜ俺なんかを狙うのか。
……いや、その理由は自分でも既に気付いている。
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