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圭たちは俊平のあとについて、森に来ていた。そこは学校の北側にある山の麓、そこに広がっている森でかなり鬱蒼としている。
日が暮れ始め、昼間でも暗い森がさらに闇に包まれる。その中を彼らは進んでいた。
「しかし暗いし、足元も悪いわね……。まさか北の森がこんな場所だったなんてね」
「俺たちはあまりこっちに来たことはなかったからな。なるほど、こんな感じとは」
廉と圭がそんな話をしていると、先頭を歩いていた俊平が振り向かずに、
「だから妖怪どもの住み処にもなってるのさ。東の外れにある廃寺もそうだが、こっちは人も寄り付かないから妖怪たちがかなり好き勝手にやってるわけ」
そう言って森の中を進む3人。するといきなり拓けた場所に出た。そこは木々の生える森の中で唯一木が生えておらず広場のようになっている。また遮るものがないので、空がはっきりと見えている。
「まるで何かの儀式でも行えそうな、そんな所だな……」
呟くように圭が言うと廉は頷く。一方俊平は既に獣の姿になると、周囲を警戒している。
「匂いはあるな、ということはどこかに潜んでいるようだな……」
「……やっぱりと思ったけど嗅覚良くなるのね、それ」
「まあな。それ以外にも身体能力も治癒力も上がるわけだしな……」
「色々と便利ねそれ……」
廉が言った直後、空を覆っていた雲がいきなり晴れた。そこから満月が現れ、その光が地上を照らす。ふと圭と廉が俊平を見るが、
「……もうなってるし、それに月見なくたって変身できるからな。いや、だから露骨に残念そうな顔をするな!もう既になってるだろうが」
俊平がそう言うと圭と廉はさらに残念そうな顔になる。するといきなり、
「でも妖怪にとって月の明かりは身体に良いものなのよ?特に満月の光は妖怪の力を増幅させるとも言われてるしね」
圭たちが声のした方を見ると、広場の中央に黒江が立っている。月明かりに照らされた彼女は笑みを浮かべ、こちらを見ている。
「ちっ、やはりいやがったか!化け猫!」
「あらあら、今日もワンコは気が立ってるわね?もう少し落ち着く事を覚えた方がいいわよ?」
そう言うとクロエはフフっと笑う。そして圭と廉を見ると、
「あら、昼間の少年少女じゃない。一応忠告はしたんだけど、やっぱり来たのね」
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