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まあな、と圭は返すと、
「確認しておいた方がいいと思ってな。どういう事をするにしても、俺は実際に見ないと信じないタイプなんだ」
「あら、そうなの。でも世の中には知らない方が身のためっていうのもあるんじゃないかしら?」
「そうだな、だが妖怪が”見えてしまった”時点でそんなものはもう通用しないのさ」
圭が返すとクロエはそれもそうね、と言うと、
「これは一本とられたわね。あなたはなかなか賢い、もしかしてそこのワンコやお嬢さんが”分かってない事”をあなたは知ってるのかしら」
「私たちが知らない事?いったい何の事よ?」
廉が圭に尋ねるが彼は黙っている。すると俊平がどうでもいい!と言うとクロエを指差し、
「とにかく、てめえが何を企んでいようとも、この俺が倒すことには変わらない!ここでお前の計画、潰してやるさ!」
「はぁ、どうしてこうもあなたは理解が乏しいのかしら……。こういう者がいるから、弱い妖怪は虐げられ、生きるのも難しくなってしまうのよ」
「お前は弱くなんかねぇだろ。十分脅威になるさ。……さぁて、無駄話はこれで終わりだ。2人は手を出すなよ?ここからは、……俺の時間だ!」
そう叫ぶと俊平は月に向かって吠えた。そして体勢を低くし、両手を地面に付けるようにするとクロエにガルルル……と唸り声をあげる。
クロエもやれやれという顔をした後、昼間のようにライターを出す火をつける。
「……まったく、どうして私の話を聞いてくれないのかしらね、皆」
投擲の準備をする。お互いが睨みあい、静寂の時間が流れる。月だけが両者を照らし、邪魔するものは何もない。
「ここで、……決着付ける!」
「望むところよ……!」
お互いがそう言い合うと、俊平が動く。低い体勢のまま、クロエに突っ込んでいく。彼女も狙いを定め、空気の球を彼に叩きつけようとしている。
そして俊平がクロエにあと数メートルと迫った。彼は爪を向けると、
「これで……、終わりぐはぁ!?」
いきなり俊平が圭に殴られた。その拳は俊平の右の頬を完璧に捉えており、彼は遠くに吹っ飛ばされた。
一方、クロエの方も既に火球を放っていた。このままだと圭に当たってしまうが彼は避けようとしない。しかし、
「まったく、信用してるとはいえ避けるそぶりぐらいはしなさい、よっ!」
廉が彼の前に立つと、木刀で火球を全て切り裂いた。
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