月下に踊る

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「なるほどね……、動物にはそんな影響が出るとは興味深い」 翌日、圭と廉は雑事堂を訪れると結斗にこの件を報告した。どうやら彼も動物への影響は知らなかったようで、圭たちの話を聞きつつ何やら本を集めては色々と調べているようだ。 「しかし本当なのか?動物への影響があれだけのものだというのは」 「恐らくな。今まで人間には害があると分かっていたが動物はどうも曖昧でな。そのまま妖怪化するとか人間と同じだとか、そんな感じだったんだがこれでやっとこさ判明した、といったところだな」 結斗はそう言いながら本を右から左に読み流し、いくつかのページで止まるとその内容を書き写していく。そして次の本へと移っていく。 すると廉がそういや、と言うと、 「月は関係あるんですか?あのクロエが言ってましたけど、月は妖怪にとって良いものとか力を増幅させるとか」 「まあ合ってるね。この件に月の光が影響していることは間違いない。推測だが多少の障気を取り込んだとしても、立ち上がったり喋ったりまではいかないはずだ。でも今回は月の光、その上満月ときた」 「つまり今回の例は特別で、月があったから彼らはああなったって事ですか?」 そうだろうね、と結斗が答える。ふーんと廉は言うと、 「何か私たちって知ってるようで知らない事が多いのね……」 「妖怪についてだってまだ分からない事は多いからね。その点で2人はすごい発見をしたことになる」 「な、何かそこまで喜べませんね……」 廉が苦笑しながら言うと圭がそういや、と言い、 「俊平の事だが、どうやらあいついつも野宿みたいな事していたらしい。だから寝床をこっちで手配しておいた。何故かクロエも行く事になったらしいがな」 「あいつ、今までどんな生活を送ってたのかしら……。ちなみにどこ?」 すると彼はうーん、と唸り鼻の傷をポリポリと掻くと、 「いやな、この前和泉が”家の手伝いが足りない”とぼやいていたんでな。で、さっきあの2人を推薦したらあっさりOKもらってな」 「え?それってあの2人を和泉のお手伝いとして送り込んだってこと?」 うん、と圭が頷く。すると廉ははぁ……と大きなため息をつくと、 「あの2人、今頃圭を恨んでるかもね……」 「まあ力仕事とか任せられる、とは言ったがな……」 圭の申し訳なさそうな顔を見て、廉はさらにため息をつくのだった。
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