月下に踊る

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 一方、そんな事などまったく知らない獣2匹は町の北側にある和泉の家に向かっていた。 ちなみに彼女の家はこの町で一番大きく、邸宅などと呼んでも謙遜ないものだ。曰く引っ越してくる数日前に完成したものだ。 「すっげーな……、こんな所に住んでるなんてよほどの金持ちだぜ?」 「そうね……。しかもその家にお世話になれるなんて運がいいわ」 2人はそう言いながら家を見上げた。すると俊平がクロエを見ると、 「そういやあんた、何であの森に残らなかったんだ?結構仲良さげに見えたがな」 「ああ、まあよくはしてもらったけどね。でも私はよそ者だし、今回ので迷惑かけちゃったしね」 ふーんと俊平は言うと、 「まあ、色々あるんだろうが聞かないでおくさ。それに今回のだって俺のせいもあるわけだしな、あんたは悪くないさ」 「まあそう言ってくれるのはありがたいね、……でもけじめはつけないといけないでしょ?彼らには平和に暮らしてもらいたいしね」 クロエはそう言うと少し遠い目をした。俊平はあえて何も聞かなかったがいきなり彼女が彼の方を向くと、 「しかし心配してくれるなんて、もしかして私に気でもあるのかな~?ん~?」 「誰があんたなんか心配するかよ。それにあんたなんか微塵も興味もねえよ」 「ちぇ、可愛いげ無いわねぇ。もう少し女性には優しくするもんよ?」 はいはい、と俊平は軽く受け流すと大きなあくびを1つする。するとコラコラとクロエが注意すると、 「もうちょっとシャキッとなさい。この家に居候させてもらえるとはいえ、面接を合格しないと駄目だって言われたじゃない」 「そうなんだがなぁ……。しゃーない、ここは張り切っていくか、何せ家と飯が懸かってるんだからな……!」 その調子よ、とクロエが励ます。すると門が見えてきた。かなり大きな門の入り口には人が2人立っている。恐らくこの屋敷の使用人だろう。 「さて、合格しなきゃ圭に会わせる顔が無いからな。やってやりますか」 「ええ、やってやりましょうか。私たちならやれるわ」 そう覚悟を決め、2人は1歩踏み出した。 そんな時だ、あの知らせが彼ら退魔士やその仲間たちに届いたのは。
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