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「頼む!俺にも彼女の作り方を伝授してくれ、いやしてください!」
3組の教室の入口、そこで渉は珍しく人に頭を下げていた。一方、下げられた男子生徒の方は困惑しつつ、
「か、顔を上げてくれ。君にそうされると僕が恥ずかしくなる……」
「そ、そうか。ならやめる!」
そう言って渉が頭を上げるとその少年はふぅと息を吐く。
その少年は特質して変わった容姿ではない。そこそこの長さの髪、背格好や顔つきも普通だ。才能も別段あるわけではないが、何か悪いものがあるかといえば無くむしろ充実した学生生活を送っている。
小道進。渉たちと同学年で1組の生徒。そして同じクラスメイトで彩色兼備の美少女、川端咲希を彼女に持つ普通の生徒だ。
「でも僕は少し人と話す事を覚えただけだよ?それと運が良かったし」
「うーん、確かに小道と咲希さんが両想いってのは驚いたよな……。でも実際何かはしたんじゃないのか?」
渉の問いに進はちらと咲希を見る。彼女は友人である廉と楽しそうに話している。またその近くには圭が椅子に座り、話を聞いている。
「彼らのお陰、かな……」
「ん?圭と廉がどうかしたのか?」
「あ、いやいや!そういや、あの2人って幼馴染みなんだよね、しかもかなり昔から」
「ん?ああ、そうだな。どうも親の付き合いもあるらしいが昔かららしいぜ」
へぇ、と進が納得したような声をあげる中、渉はあることを考えていた。
(そういや、”あの子”は元気にしてるだろうか……、最近まったく連絡無いがどうしてるだろう?)
物思いにふける渉。すると進が、
「で、渉くんは彼女を作りたいんだったよね?ちなみに好きな人とかはいる?」
「ん?あ、ああ!もちろんとも!隣の3組の咲坂桔梗って子でさ、駅前の花木屋って花屋さんの娘さん」
「花木屋……、ああ!知ってる知ってる!あのすごい品揃えの花屋さんだよね!僕も川端さんと行ったけど、すごい親切な店員さんと花の知識がすごい女の子がいるよね」
そ、そうだなと少しどもり気味に渉は答える。片方は桔梗で間違いないが、もう片っぽは妖怪絡新婦の織原紫だろう。確かに親切といえば親切だが、若干人を小馬鹿にしている、と渉は見ていた。
(いっつもあの態度なんだよな……、まあ接客とかは見た感じ結構上手いが)
すると進が少し考えながら言った。
「んー、でも彼女なかなか読めないというか、少し不思議な雰囲気を持ってる人だよね」
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