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ここはとある発掘現場。そこでは古代の古墳の発掘作業が行われていた。
「おーい、ちょっとこっち手伝ってくれー」
「慎重にやれよ!壊れたら価値が無くなるんだからな!」
「そこ、踏みつけるなよ!」
作業員が動き回り声が飛び交うなか、少し離れた場所でその様子を見守る者たちがいた。
その2人は作業員ではないようだ。片方は髭をはやした壮年の男、もう片方は若い男だ。すると壮年の男が、
「いやしかし、これほどの古墳が発見されるなんて驚いたよ!君には感謝のしようもないね!」
「いえいえ、お構い無く。しかしこれはいつ頃の古墳で、誰が埋葬されてたのですか?」
すると壮年の男はそうだなぁと顎髭を撫でると、
「古墳時代中期くらいのものだな、しかしかなりの規模だから恐らくかなり力を持つ豪族だったんだろう。しかし……」
「しかし?何かあるんですか?」
若い男が訊ねると壮年の男はいやねと言った上で、
「これだけの大きな古墳、この地域に作れるような豪族がいたとは思えないんだ。記録にも見当たらないし、……もしかしたら幻の王国か何かなのかもしれない」
「幻の王国ですか……、となるとかなりの大発見ではありませんか」
「そうなるね。もしかしたら考古学上最大の発見かもしれないぞ……!」
壮年の男はそう言うと興奮した様子で遺跡を見る。一方の若い男も笑っていたがその笑みは不敵なものだ。すると、
「おーい、何か見つかったぞー!」
遠くで叫び声が聞こえてくる。それを聞いて壮年の男は
「どうやら見つかったようだ。ついに幻の王国とご対面だ」
そう言うと走ってそちらへと向かった。若い男もそちらへ向かうがそのペースはかなり遅い。いや、なるべく”距離を取ろうとしている”。
発掘現場に着くとそこには巨大な石の棺桶が掘り出されていた。大人一人入れるほどの大きさで外側には何か紋様が描かれている。
「す、すばらしい!これは大発見だぞ!」
「はぁ、しかしこれなかなか開かなくて……」
「ふむ、もしかしたら盗掘防止のためのものかもしれないな……。1度持ち帰った方がいいかもしれないね」
壮年の男は顎をいじりながら呟く。周りが慌ただしく動く中、若い男はその様子を不敵な笑みで見ている。そして呟いた。
「さて、お目覚めの時間だ。”王(おおきみ)”よ」
その時、棺の蓋が少し開いた。
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