ヒャクニチソウの花が咲く

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「うーん、なかなか難しいよな……」 放課後になり、桔梗の家である花木屋に彼女と向かっていた渉はそう呟いた。 「ん?何か難しいの?」 「あ、あぁ、いや。こっちの話さ」 「そう、でも何かあったら私にも相談してね」 「お、おう……。そうさせてもらうわ……」 彼女の言葉に渉は曖昧な返事を返す。そして2人は静かに帰り道を行く。 しばらくして、ふと思い出したかのように渉は桔梗に聞く。 「そういや桔梗っていつから花が好きなんだ?」 「うーん、幼い頃からかな。親が花屋さんを営んでいたのもあるけど、やっぱり母さんが花好きだったのもあるかも」 「母さんっていうと……、あ!すまん!聞かない方がよかったか?」 渉が謝ると桔梗はいいよ、と笑いながら答えると、 「母さんが亡くなったのは病気だし、誰のせいでもないからね。でもまあ母さんはほんとに花好きだったなぁ……。花についての知識も豊富だったし、父さんも勝てなかったからね」 「へぇ、そうなのか……。すごかったんだな、お母さん」 渉が感心しながら言うと桔梗は照れながらえへへと笑ってみせる。暮れようとする日をバックに見たその笑顔はとても綺麗で、渉は思わず見とれてしまった。 「……ん?どうしたの?顔赤いけど」 「え?あ、あぁ!いや!ちょ、ちょっとな!気にしなくても良いから!」 「……?何か気になるなぁ。あ、それとあの男子と何を話してたの?」 桔梗が聞くと、渉は固まる。さすがに桔梗をどうやって彼女にするか聞いていたなど言える訳もなく、 「い、いやー、ちょっとした世間話?そんな感じだ!あはは……」 「ふーん、そうなんだ。……そういえば渉君って」 桔梗がそう言いかけた時、渉は不意に前を向いた。その表情は険しいもので、まるで敵と相対してるかのような顔だ。それに気づいた桔梗が心配そうに彼を見ると、 「……妖怪がいるの?それとも人?」 「人だ。だが、……俺と同じ、恐らく退魔士だろうな。おい!出てこいよ!」 渉が叫ぶと、返事の代わりに前方からナイフが飛んでくる。渉はそれの刃の部分を何なく掴んで止める。その手から血は出ていない。 「だ、大丈夫!?いきなりナイフが飛んできたけど……」 「あぁ、能力があるからこの程度じゃ怪我にもならないさ。平気平気」 そう言って渉はナイフを手に持つと、それが飛んできた方向をしばらく睨んでいた。
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