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花木屋に着いて、桔梗は仕事を始めた。会計や花の水やりなどを何なくこなす。
一方、渉は手伝いとして店内の掃除や商品を運んだりなど雑務をこなしていた。こちらも回数が増えたせいか、結構手慣れている。
ふと渉の視線に1つの花が入る。それは小さな花で、赤や黄などのカラフルな色をしていた。
「なぁ、桔梗。この花って何だ?」
「ん?あぁ、それね。それはヒャクニチソウね」
「ヒャクニチソウ?この花の名前か」
そう、と彼女は答える。そして花の入ったプランターを持つとそれを渉に見せ、
「漢字では百日に草と書くの。花が咲く時期は6月から11月で、春に種を蒔いて夏から秋まで花を楽しむ”種まき一年草”として知られているわ。カラフルで明るい印象があるからイベント会場とかでもよく利用されているわ」
渉はふむふむとうなずく。さらに彼女は続け、
「花言葉は”別れた友を思う、亡き友をしのぶ”よ」
「別れた友か……、俺にはぴったりかもな」
「渉君には別れた友達がいるの?」
桔梗の言葉にまあな、と答えると、
「幼稚園の頃かな。仲良くしていた女の子がいてな、今は引っ越しちゃって遠いところにいるんだけどな。まあこれが泣き虫でよ、転んでは泣いてたんだよ。そういや、あの子も花が好きだったな……」
「へぇ、そうなんだ……」
渉は懐かしそうに言い、桔梗はそれを聞いていたがその表情は少し悲しそうだ。渉はそれに気づくと慌てて、
「あ、悪い!いや、その、その子の事は結構気になってたけど、でももう会ってないし、今はどうか知らないし!いやでも、別の女の子の話するのは……」
「いや、全然大丈夫!それに関係なくはないし……」
「え?今なんて……」
渉が尋ねようとしたが、その先は言えなかった。人が来たからだ。
「あ、いらっしゃいませ!どの花をお買い求めですか?」
桔梗は急いでお客の元に向かうと笑顔でそう聞いた。渉は掃除を再開したが、ふと客の方を見た。その瞬間、男が桔梗の肩を掴むと
「来てもらうぞ。抵抗はしない方がいい」
「え……?」「おいお前、何をして……」
渉は男に駆け寄ろうとしたが、いきなり男はポケットからナイフを取り出す。それは先程渉に飛んできたナイフに似ており、さらにナイフの本数がいきなり増えた。
「な……!本数が増えた!」
「邪魔をしないでもらおうか。物事はスムーズに進めたいんでな……!」
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