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男は渉に向けてナイフを投げつけた。無数のナイフが飛び、店内にある物を切り裂いていく。
「ちっ!いったい、何なんだよっ!」
渉はとっさに腕で顔を隠し、能力でナイフを防ぐが、服は切り裂かれる。しかし体には傷一つ無く、また無傷だ。
すると渉が怯んだ隙に男は桔梗を連れて逃げ出す。渉はそれに気づくと、
「おい、待ちやがれ!……くそ!あの野郎、逃がすか!」
そう言うと渉は外に出て男を探す。すると男は旧商店街の方へ向かっていくのが見えた。
「あっちは旧商店街の方か……、厄介なところに行きやがって!」
渉はそのまま男を追おうとしたが、
「あ!渉君!こ、これはいったい……」
誰かに呼び止められ彼は足を止める。そこにいたのは少し土の着いた服を着た男、桔梗の父と紫のラインが入ったTシャツとジーンズをはいた女性、織原紫だった。何かを抱えているが、恐らくすべて花であろう。
「あ、咲坂さん!桔梗が拐われたんです!店もこんな有り様に……」
「な、何だって!?それは大変じゃないか!……紫さん、店は任せます。私は犯人を」
「馬鹿なこと言わないで下さい店長。自分の店見捨ててどうするんです?」
し、しかしと父は言う。すると渉が前に出て、
「俺が行って、連れ帰ってきます」
「君がかい!?相手は君と同じような存在なんだろう?それに怪我も……」
「してないです。体が丈夫なのが取り柄なんで。……それに彼女の好きな花をこんな事にした奴を、俺は許しておけないんです!」
渉の気迫に少し押されぎみになる父。すると紫がフフと笑うと、
「若いわねぇ。まだまだ血気盛んで未熟、でもその覚悟は何者にも勝るわ。店は私たちが何とかするから、あなたはこの店一番の”華”を頼むわ」
「おう、任せておけ!よっし、待ってろよぉ!」
そう叫ぶと渉は旧商店街の方へと走っていく。その後ろ姿を2人は見送っていたが、
「いいですね、若いのって。私も見習いたいです……」
「ふふ、満(みちる)さんだってまだまだ若いじゃないですか」
「紫さん、せめて”店長”で貫き通してくれませんか……。勘違いされて勘ぐられるのは困るんです……」
「私は一向に構いませんけどね。さて、私たちは店の片付けをしましょうか」
彼女は微笑んで見せると店へと入っていく。満もやれやれという顔をしながら店へと入っていった。
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