3人が本棚に入れています
本棚に追加
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
旧商店街の奥、そこに広場のような所がある。
アーケード街の中心であるそこは天井が開いており、月の光が差している。地面に敷き詰められたタイルはところどころ剥がれており、中央には銅像があったのだろうが今は既に原型を留めていない。
かつては人々が集まり、商店街の中でも賑やかだったのだろう。今は人の姿などおらず、閑散としている。
その場所に桔梗は男に連れられて来ていた。するとそこに着くと男は止まり、
「着いたな。しばらくここで待ってもらおう。ああ、別に縛りつけるつもりは無いから自然にしてるといい」
男は桔梗にそう告げると、銅像が乗っていた台に寄りかかった。桔梗は疑いの視線を彼に向けつつ、黙って従う。
彼は短い黒髪に緑のバンダナを頭に付けており、黒のタンクトップに灰のカーゴパンツにブーツ、さらにチェーンもいくつも付けている。目つきは鋭くがらが悪そうにも見える。
桔梗は男を横目で眺めながら、辺りの暗闇を見回していた。何も見えない深い闇、その先に何か潜んでいてもおかしくない。桔梗はそんな不安にとらわれていた。
(渉君、大丈夫かな……。怪我してないといいけど。それに父さんや紫さんも心配してるだろうな……)
男は黙ってそこに立っている。時間がしばらく経ち、月の明かりがこちらにも差してきた。犬だろうか、何かの動物の咆哮が遠くから聞こえてくる。
と、その瞬間。何かが崩れる音が大きく響く。桔梗が音の方向を向くと、砂ぼこりが上がり重ねられていた荷物の山が崩れている。そしてそこに人影が見えると、
「ゴホッ、ゴホッ!あー、いってぇ……。意外にいけると思ったけどこの能力無しだときついよな……」
そんな呟きの声が聞こえる。そして砂ぼこりが完全に晴れるとそこには1人の少年が立っていた。
「……やはり来たか。まあ予想外の登場の仕方だったが」
「あ?別にどんな形でもたどり着けばいいんだよ。まあちょっと間抜けな感じだったがな」
そう返すと渉はパンパンと埃を払うと、桔梗をちらりと見てすぐに男を見た。そして回りを見渡してからやれやれと言うと、
「さて、こんな所まで来て何が目的なんだ?というかお前何者だよ?」
すると男はそうだな、と言うと鋭い目で渉を見ながら言った。
「俺の名は弦本和哉(つるもとかずや)。お前と同じ”退魔士”で、お前らを倒すためにここに来た」
最初のコメントを投稿しよう!