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「嘘、渉君……、私のせいで……」
桔梗が呆然とした表情で土煙の立つその場所を見る。しかし土煙が晴れないので彼の安否がまだわからない。和哉はさて、と言うと、
「4本ともほぼ直撃した、恐らく仕留めただろう。おっと、あんたも知った以上は生かしておくわけにはいかないな」
彼は呆然とする桔梗に鉄パイプを向ける。その目は少し哀れむものであったが彼は構わずパイプを振り下ろそうとした。しかし、
「おい、誰が仕留められたって……?」
その一撃は当たる前に受け止められていた。和哉が見るとそこには先程仕留めたと確信した渉が立っていた。その目は怒りが見え、まっすぐと彼を見ている。
「渉君……!無事だったのね!」
「どういう事だ……。確実に鉄パイプは当たったはず、それなのになぜ立っていられる!?」
すると渉はそれに答えず、受け止めていた鉄パイプに力を込める。するとそれはあらぬ方向に曲がり、変形してしまった。和哉がそれに驚愕するが渉はパイプを投げ捨てるとすかさず彼の腹部に右の拳を叩き込んだ。
「何っ、ぐぉあ!?」
和哉はそのまま吹っ飛ぶと、近くの建物のシャッターに突っ込んだ。長年の埃が舞い上がり、シャッターも衝撃で形が変わる。和哉も無事ではなく、口から血を吐いている。骨も数本折れているだろう。
「ぐ……、馬鹿な……。俺の狙いは、正確だった、はずだ……。それなのに……」
「いや、無傷では済まなかったさ。少し刺さって血も出たしな」
彼が自らの腹部を指さすと、そこには何かが刺さり血が出た跡がある。しかし今は止まっており、傷自体も深くない。
「やはり刺さっていたか……。しかし、それなら何故?いったい何をした……」
「簡単だ。俺の能力は自らを強化する、それは身体を頑丈にするだけでなく、五感や治癒力も高められるのさ」
「……まさかあの鉄パイプすべてを止めたと言うのか?ぎりぎりで受け止め止血し、俺の背後に回ったのか?」
「いやー、あれは危なかったぜ。あと少し遅れてたら深く刺さって治癒にも時間が掛かったかもな。しばらく待っていたが桔梗が危なかったから飛び出しちまったのさ」
すると和哉はふん、と言うと、
「……なるほど。慢心していたのはあんたではなく、俺のほうだったか。いやはや、俺も詰めが甘かったな」
「そうかよ。それよりお前の特技とはいったい何だ?もしかしてあれだけ正確な投擲がそうなのか?」
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