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渉はそのまま怪物の群れへと突っ込む。そして迫りくる怪物たちを次々となぎ倒していく。
怪物を鋭い爪などで攻撃するが彼はお構いなく進む。能力で軽減されているとはいえ、さすがに傷が見られる。
「馬鹿な奴だ……、人には無茶と言っておきながら自分は1人で突っ込むなんて」
渉の後ろ姿を見て、和哉はそう呟く。するといつの間にか近くに来ていた桔梗が、
「まったくだよね。相手には無茶するなって言って自分は無茶ばかりしてね。昔からそうだった……」
そう言いかけて桔梗は口をつぐむ。和哉が不思議そうな顔で彼女を見るが咳払いをすると、
「ま、まあそういう行動をするにも訳があってね、実は彼はある願いを持っているの、それは”どんな人であっても、自分と親しい人々が幸せである事”」
「自分と親しい人々が幸せである事?ふ、まるで幼い子供が抱く夢だな」
「まあそうかもね。でも昔から変わらないんだって。何でもかつて友達だった幼馴染が家の都合で引っ越しちゃって、別れも言えなかったんだって」
そう言いながら、彼女は渉が話していた昔話を思い出していた。店の仕事の合間に聞いたが、その話を終えると彼はこう言った。
『まあその時は俺も子供で何もできなかったけどさ、それ以上にあの子の助けになれなかった自分が悔しくてさ。で、子供ながらにいろいろ考えてそれで思ったんだ、”ならこれからは俺が皆の不幸にならないよう、周りを明るくしよう。そして自分と親しい人たちが幸せになるようにしよう”ってさ』
そう言うと彼は照れ笑いを浮かべ、ガキっぽいよなと言ったのを彼女は覚えている。
(そう、彼はいつまでも”変わってない”。大人になっても、周りが変わっても……)
すると渉がまた敵を吹き飛ばし、桔梗たちを見ると、
「こっちだ!ここから逃げるぞ!」
そう言って、手招きする。2人はそれに頷くと彼のいる場所に向かう。すると和哉が渉に、
「ずいぶんとボロボロだな。俺以上に無茶をしてるよ、あんた」
「あ?俺は能力があるからいいんだよ、傷もすぐ治るし。とりあえず行くぞ」
渉がそう言うと3人は出口へ走る。走っている時桔梗が彼に言った。
「渉君、能力はあってもやっぱり無茶は控えてね?何かあったら皆も私も……」
「確かにそうかもな。……でも、それは無理だ。何せ俺の願いは無茶前提だからな」
桔梗は少し悲しい顔をしながら、その後は黙っていた。
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