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所変わってここは辺境の山里。そこでは銃を構えた自衛隊の隊員が、敵と相対していた。
「く、くそ……、いったい何なんだこいつは……!」
彼らの目の前、そこには大きな熊がいる。しかしただの熊ではない、年経て妖魔と化した”鬼熊”だ。体に付く血は先程までいた隊員たちのものだ。
「ついに俺1人になっちまったか……、もうこれじゃあ助からないだろうな」
彼は自嘲気味に笑うと、前を向く。そこにはまさに自分に牙を剥く熊がいる。彼は銃を構え直すと、
「こうなったら徹底的にやってやるさ、例えここで死のうともな……!」
狙いを熊の頭に定める。熊もこちらに右腕を振り上げその爪の一撃を食らわそうとしたが、それが振り下ろされることはなかった。
男が見たもの、それは宙に血とともに浮く熊の右腕、そして剣を振り上げた青年の姿であった。
「な、何だ……?」
男の困惑の声は熊の咆哮でかき消された。青年は再び剣を熊に構えると熊も身を低くし身構える。
しばらく睨みあっていた両者だったが、熊が動いた。残っている左腕の爪で青年を切り裂きにきたのだ。しかし、
「注意が散漫よ、だからこうやって近くの敵にも気付けない」
空から槍が落ちてくると、熊の体を貫く。槍の穂先はそのまま地面に刺さると、ちょうど熊の体は浮き上がる格好となる。何とかして逃れようともがく熊に青年は近づくと、そのまま熊の首を剣で断った。
「やれやれ、俺1人でもいいと言っただろ」
「そうはいきません。私はあなたの補佐を任されてるんですから」
「俺は子供じゃない、子守なら別を当たってくれ」
呆れ顔で青年は答える。見ると熊の体に立つ少女、彼女が熊から槍を引き抜いている。どうやら先程の声は彼女のもので、この槍の持ち主もそうなのだろう。
「あ、あの、助けていただきありがとうございます」
男が言うと2人がこちらを見る。男より年下だろうか、端正な顔つきの2人は深紅を主体とした軍服らしき服を着ており、肩のワッペンには【PPML】の文字。
「あ、もしかしてあなた方は……」
すると青年が男に近づくと手を差し伸べ告げた。
「我々はPPML。超常現象対策課に所属する者たちです。お怪我はありませんでしたか?」
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