ヒャクニチソウの花が咲く

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 次の日、桔梗は店の片付けを手伝っていた。店の棚に商品の花や種などを種類ごとに分け、それを並べていく。 あの後、3人は旧商店街から脱出した。怪物は何故か、外までは追ってこなかった。桔梗が渉たちと店に戻ると父の満と紫が安心した表情で迎えてくれた。渉にも礼を言ってもてなそうとしたが彼は断り、和哉を連れて去っていった。 「うーん、しかし昨日のはいったい何だったんだろう……」 「桔梗ちゃん、大丈夫?昨日は大変だったから休んでてもいいのに」 「大丈夫です、紫さん。それに私のせいでこうなったんですし、手伝いは当然です」 「そう?まあ、あなたのせいじゃないからそんなに気にしなくてもいいんだけどね」 紫はそう言って微笑んでみせる。桔梗はありがとうございますと言って礼をする。そんな中外が何か騒がしい、誰かが騒いでいるようだ。 「あら?外が賑やかね。何かしら?」 紫が外に出て、様子を窺う。桔梗もそれに続く。すると外で1人の少年が自分より大きな獣と巨人を追いかけていた。 「コラァ!ライタ、ガイ!勝手に走るんじゃない!」 それは渉だ。追いかけているのは東の廃寺に住む雷獣のライタと山男のガイで、彼に懐いている妖怪たちだ。商店街の人たちは驚いたり興味深そうに見ている、しかし誰も妖怪が街を闊歩している点には何も言っていない。 「……渉はもう怪我が治ったみたいね、まったく頑丈なのは元来からなのかもね」 「そうかもしれませんね。でも、……ほんと無事で良かった」 桔梗はそう言って、胸を撫で下ろす。その表情は心の底から彼を心配していたものだ。すると紫がにやりと笑い、 「へえ、そうなんだ。無事で良かったねえ……。そこまで気にかけてるのね、彼のこと」 「え?あ、ああ!それは当然ですよ、だって”大切な友達”なんですし」 「大切な友達、ねえ……?果たしてどういう意味なのかな?」 「な!普通の意味です!いいから仕事に戻りますよ!」 はーい、と言って紫は自分の仕事に戻る。桔梗ははぁ、とため息をするとカウンターに置いている花、アングレカムの水を取り換える。ふとその時、1個の花が目に入る。それはヒャクニチソウだ、しかしそれはジニアという名札が付いている。 ふと、彼女が呟いた。 「ジニア、ヒャクニチソウの別名。こちらの花言葉は”別れた友への思い”。そして、……”別れた友を想う”」
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