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一方、とある屋敷。ここでは1人の男が急ぎ足で廊下を歩いていた。その後ろには執事らしき男がついていく。
「御当主、あまりそう急がなくても……」
「ここで急がんでどうする!あぁ、まったく!いつまであいつは私に世話を焼かせるのだ……!」
少し白髪混じりのオールバックに立派な口髭、よく見る伯爵のような顔の男は執事にそう言うと、さらに歩みを進める。
一方の執事も黙って彼についていく。執事も年経てはいるが目つきは鋭く、体つきも若々しく見える。
2人は廊下を小走りで歩いていると、角から1人の青年が現れる。その顔つきはこの御当主と呼ばれた男に似ており、目が大きいからか目力があり、さらに真面目そうな顔つきをしている。彼は男に気づくと一礼する。
当主も彼に気付くと、
「おお、いたか。ちょうど呼ぼうとしていた所だったのだ」
「それは好都合です。して、どのような用事でしょうか、”父上”」
すると父上と呼ばれた当主はああ、と言うと、
「”あいつ”を呼び戻す。退魔士というのが世に知られてしまったからな、もう家に連れ戻すしかない」
「そうですか……、しかし彼女が聞きますか?父上にもそうですが、あれは家自体を嫌ってますから」
「そうだとしても、1度家に帰ってきてもらう。これであいつが退魔士の仲間だと知れ渡ったら……」
そこまで言うと当主は咳払いをして、とにかくと言うと、
「どんな手を使っても連れ戻すのだ。お前が忙しいのなら”近江”の手も借りてやれ」
「近江は確か今出掛けていると思います。ですが必要な時は手助けして貰います」
ああ、と言うと今度は彼の後ろから2人の女の子が現れる。彼女らは綺麗な服をまとい、髪も整えられている。片方は中学生ぐらいでもう片方は小学生だろうか。
「父上、姉上が帰ってこられるのですか!」
「そうだ、あいつを連れ戻してくる。その間、お前たちは静かにしているんだぞ」
「えぇー!私、姉さまに会いたいです!」
「そうわがままを言うな。あいつとは、大事な話があるんだからな」
そう言うと当主は2人の少女の頭を撫で、青年に視線を送ると執事を連れ廊下を歩いていった。
青年はその後ろ姿を見送りつつ、ため息をつくと呟いた。
「くれぐれも厄介事にはしないでくれよ、”和泉”……」
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