月下に踊る

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5月末になり、だんだんと梅雨の気配が近づいてきている。灰色の雲が空を埋め尽くしており、今にも雨が降りそうである。 「おーい、何してるのよ?」 窓の外を眺める圭に廉は尋ねる。すると彼は彼女を一度見ると、 「……外を見ていただけだがな」 「いやいや、結構長い間見てたわよ?やっぱり皆と話したくない?」 そう言うと彼女は周りを見る。クラスメイトたちは皆おのおのの事をしながら、時々圭たちを見る。 この前静岡での事件、あれで圭たちは退魔士だということが知られた。学校の方でも説明があったり、テレビでもそこまで過激に報道されなかったため、あまり圭たちに影響は出ていなかった。しかし、 「あれは怖がってる、というべきだろうな……。何せ、どう接するか分からないんだからな」 「まあ確かに……。私たちが退魔士と知って、今までのように接していいか、迷うだろうしね……」 そういうことだ、と圭は言うと再び窓の方を向き直る。廉も少し寂しげな顔をして彼と同じ方向を向く。すると、 「暗い顔なんてらしくないわよ、廉!」 いきなり廉は肩を叩かれた。振り返るとそこには1人の少女が立っている。 長い黒髪を後ろに縛り、ポニーテールにしている。黒い瞳に切れ長の目は彼女にクールな印象を与えるが、彼女はかなり陽気な性格だ。 「あ、咲希!どうしたのよいきなり」 「いやさ、皆何か一歩引いてるからさ。私が廉と話せば皆も大丈夫だって証明できるでしょ?」 そう言ってにっこり笑う彼女は川端咲希。1組なので圭たちとはクラスは違うが、剣道部で廉に次ぐ強さを持っている。まあ、廉があまりにも強すぎるのはあるが。 「おう、咲希か。今日も明るいな」 「いつも通りよ、夜野君。しかし今日はお嬢様や美濃君がいないみたいだけど?」 あの2人か、と圭は答えると、 「蒼也は用事で外してる。和泉の方も、お手伝いさんに呼ばれてったぞ」 「ふーん、そうなのね。何かいつもより静かだなーと思って」 「あー、そういやそうね。そういやあのバカはどこに?あいつがいないと静かになるわね」 廉が尋ねると圭が指差す。そこには男子生徒に詰め寄る渉の姿があった。 「何やってるのよ……、しかも捕まってるのって」 「小道くんね……、恐らく恋愛どうこうだと思うけど……」 廉と咲希がため息をつく。すると圭が言った。 「助けないのか?咲希の彼氏だろ?」
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