月下に踊る

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「あぁ、まあ助けたいけどね。でも彼、最近人と話すのも慣れたから、もっと多くの人と話してみたいんだって。あれも迷惑そうだけど、彼にとっては楽しいのかも」 そう言って彼女は進を見る。確かに彼はそこまで困ってはおらず、楽しそうに話している。渉もメモを取りながらアドバイスを受けている。 「へぇ、なら良かったわ。確かに彼、咲希と付き合ってから変わったもんね」 「前会ったときより堂々としてる。今なら北順とも正面から話せるさ」 圭と廉はそう言いながら彼らを眺める。実は進を変えるきっかけの1つが彼らなのだが、まったく気付いていない。 「はぁ、あんたたちってほんと似てるわね……」 「いいじゃない、別に。それより!どう?彼とはさ!」 廉がさらに話を聞こうとする。咲希もえーと言いながら頬を染めている。圭がやれやれという顔で再び窓の方を向こうとしたとき、 「お、いたいた。おーい、夜野圭ー」 圭を呼ぶ、とても緩い声が聞こえてきた。圭たちが振り向くとそこには男子生徒が立っている。 「圭、知り合い?」「いや、全然知らんな」 圭たちが首をかしげていると生徒が近づいてくる。短い黒髪はボサボサで瞳は焦げ茶色、その目はとても眠そうでさらに無精髭がはえている。 同じ高校生には見えない風貌の生徒はこちらに来るとふぅと一息つき、 「夜野圭だな、隣にいるのは一之瀬廉か」 「ああ、そうだ。で、君は誰だ?」 圭の問いに彼はそうだった、と思い出すと、 「自己紹介せずに話を進めるところだった、悪い悪い。俺は3組の山岡俊平(やまおかしゅんぺい)。まあ”人ではない”かな」 その言葉に圭たちは身構える。咲希も彼らの気配を察したか、1歩下がる。しかし俊平は眠そうな顔を変えず、それどころか大きなあくびをしてみせた。 その様子に圭は呆れた表情をすると、 「……目的があってきたんだろうな?それとも冷やかしか?」 「ふぁ~、……いやいや、悪いな。俺眠い状態が基本だからよ」 「ずいぶん暢気ねぇ……、で私たちに何の用?」 廉が言うと、俊平はうむと答え、 「実は月夜の晩に何やら企んでいる連中がいてな」 「企んでいる連中?相手は分かるか」 圭が尋ねるといや、と俊平は言って続けた。 「分からんが厄介な連中のようだ。満月の夜に現れ何やら儀式をしている様子でな。俺だけで片付けたいが、一応だ。お前さんら退魔士の力を貸してもらいたい」
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