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圭と廉は俊平から詳しく話を聞くため、雑事堂へと向かっていた。
「そういや廉、剣道部の練習はどうした?今日は北順もいるし、あると思うが」
「あ、言ってなかったっけ?今度から何か用事がある時は、あらかじめ断りを入れてからなら練習休んでも良いことになったのよ」
するとへぇと俊平は驚いた声をあげると、
「あの北順がねぇ……。しかもあんた、剣道部だったろ。サボったりするとヤバイって聞いてたが」
「前はね。でも退魔士だと知られてからはどうも甘くなった気がするわ。何か過去に退魔士と何かあったのかしらね……?」
廉が疑問を口にするが圭は黙って歩いている。そしてもう少しで旧商店街に着こうかという時、不意に先頭を歩いていた圭が止まり、2人も足を止める。
「ん?どうしたのよ圭。もう少しで雑事堂に」
「静かに。何かいるようだ。……障気を感じるから恐らく妖怪だ」
その言葉を聞くと廉も周囲を警戒しながら木刀を構える。圭も拳を構え、いつ出てきても構わぬよう準備している。しかし俊平は苦虫を潰したような顔をすると、
「まさか、あいつか……。また俺の邪魔をしに」
「あいつ?知り合いか?」
その言葉に俊平はああ、と返すと、
「この件を知ってからつけ回してくる奴がいてよ。まあ妖怪なんだが、なかなかの手練れで俺も手を焼いてる」
「そう?圧倒されてるの間違いじゃないのかしら?」
不意に声がする。圭たちが見るとそこには1人の女性が立っている。
圭たちより年上であろう女性は全身黒のライダースーツを着て、黒髪を縛らず腰まで伸ばしている。とても整った顔だちをしているがどうも”人とは思えない”美しさだ。
「来たかよ、化け猫……!」
「あら、ワンちゃんがまた吠えてるわね。隣にいるのは退魔士、かしら?」
ニヤリと笑って見せる女性。するとそれと同時に頭には猫の耳、2本の黒い尾が現れた。
「なるほど、あんたは猫又といったところか」
「そうよ。黒猫のクロエ。漢字で書くなら黒に江戸の江で黒江かしら」
「てめぇ、また舐めたことを……!」
俊平はそう言うと、唸り始める。すると彼の体がみるみると大きくなっていく。全身が毛深く、さらに鋭い爪が手足から伸び尾がはえ、顔つきも犬のように変化し、まるで犬の姿をした人間のようになった。
クロエがフフッと笑うと告げた。
「”獣人”、やはりそうだったわね」
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