3人が本棚に入れています
本棚に追加
「獣人?何よそれ?」
廉が圭に尋ねると彼はうーんと唸り、
「俺も詳しくは知らないんだがな。確か妖力を持った獣、妖獣と人の間に生まれた存在が獣人だとは聞いたことがある」
「へぇ、そうなの。てことは、あいつも私たちのように妖怪と戦えるって事ね」
そうだな、と圭は答える。一方俊平は犬のようにガルルと唸りながらクロエを睨み付けると、
「今日こそは絶対仕留めてやるからな……!」
「そのセリフ、もう聞き飽きたわ。いい加減諦めることを覚えなさいな」
「あぁ、そうするさ、……てめえを倒すのを諦める事をな!」
そう叫ぶとクロエに向かって飛びかかる俊平。彼女はやれやれといった顔をすると、
「学習能力無いわね……。だからいつも私にやられるのよ」
そう言うと彼女はポケットからライターを取り出すと火をつける。するとその火がみるみる大きくなり、それが球体となって彼女の周りに浮き上がる。
「燃え尽きなさい、その愚かな考えとともにね」
クロエの言葉とともに火球が発射される。それは勢いよく、すべて俊平に向かっていく。しかし彼は避ける様子もなくそれにぶつかっていこうとしている。
「そんなものに、この俺がやられるかよ!」
彼はそのまま爪で火球を壊そうとした。しかし、
「無策で突っ込むな、死にたいのか」
そう言いながら圭が彼の前に立ちふさがると、火球をすべて殴って壊す。さらに廉がクロエに向かっていくと、
「これでも、食らいなさい!せぇい!」
葉桜を叩き込む。黒江はそれを避けるが、地面に叩きつけられた一撃は道路をへこませるほどのものだ。
「く、外したわね……!」
「何て力……、これが退魔士の実力ってことね」
クロエはそう呟くと2、3歩下がり圭と廉を交互に見る。そしてニヤリと笑うと、
「ここは1度退いた方がいいわね。あなたたちを相手にするのはかなり骨が折れそうだし。それに、……あなたたちと戦うのは本意ではないわ」
「逃げる気か!そうはさせないぜ!」
「あら犬さん、あなたは別よ。あなたは論外だからね?」
何ー!と怒る俊平を無視すると彼女は近くの建物の屋根に上がり圭たちを見下ろすと、
「それでは私は失礼するわ。言っておくけど”私たち”の邪魔をするようなら、今度は容赦しないわ。それだけは覚えておいてね」
そう言い放つと、クロエはどこかへと去っていった。
最初のコメントを投稿しよう!