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エスペラント王国──人口二億人を超える、セリグ・オルタナ西端では最も大きな国である。
西には海を挟んでヴェルグランド公国があり、南にはエスペラント王国と同程度の国力を有するロマルニア聖教国、東にはヴァイマァール帝国が広がる。
そんなエスペラント王国と隣国ヴァイマァール帝国との国境のゲートに、白と黒のローブを着た二人組が立っていた。
白いローブを着ている方は、胸の膨らみから女性だということが窺える。
逆に、黒いローブの方は身長や背格好から男性だと分かる。
「さて、ここを抜ければもうエスペラントね」
「何で俺までミラ……いや、母さんに付き合わなきゃならないんだよ」
黒いローブを着た男性──声色からして少年──が、不満げな声を上げる。
ローブのフードを目深に被っているので分からないが、その声から口を尖らせていることが容易に想像できる。
ミラと呼ばれた白いローブの女性は、拗ねたように言った。
「ひどい言い方ねー、ロゼ。仕方ないじゃないの。私たちのギルド『楽園の規律』(エデンコード)の本部は、エスペラントの王都・アルテルフにあるんだから」
実際、ミラの言うとおりだった。
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