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急に笑顔になって、ニヤリと嫌らしい笑みを広げるミラ。
ロゼは心の中でやられたと思った。
これは母さんの、ミラのロゼを扱う常套手段だ。
ロゼもそれは解っているのだけど、毎回この手に引っかかり、ミラの思惑通りに進んでしまうのだ。
だけど、それもまぁいいかと心中で呟き、ロゼはエスペラント王国の国境ゲートである建物を見つめた。
「十年ぶりか……。まさか、こんな形で戻ってくることになるなんてな」
どこか哀しげな表情で、ロゼは呟く。
「ロゼ、あなたが何を考えているか分からないし、昔この国で何があったのか私は知らないけど、今のあなたは一人じゃないわ。私がいるのよ」
「……ありがとう、母さん」
ロゼはフードの先をきつく摘んで深くすると、涙が零れそうになるのを堪えた。
「さっ、それじゃ行きましょうか!」
ミラがフードを取って歩き出す。
彼女の綺麗な金色の髪がフードの中から零れ落ちる。
透き通るような金色の長髪。美しい目鼻立ちは、すれ違う異性を全て振り向かせるほどだ。
「ほらー! ロゼ、置いてっちゃうわよ!」
「っ、今行くって!」
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