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赤ん坊のそんな姿を見ているとゼアトゥールは、胸の中に温かい何かが満ちていくのを感じた。
この瞬間、確かに二人は幸せだった。
「それではゼアトゥール様。さっそくご子息のお名前を……」
「そうであったな、ベルモンド。ん? 男の子の場合は何であったかな……」
昨晩まで、リズベッドと共に毎晩考えていたのに、子が産まれたという喜びでどこかへ吹っ飛んでしまったらしい。
女の子の場合はアリスというのは覚えているのだが。
「ロゼルクスでございます。ゼアトゥール様」
「おぉ、そうだ! ロゼルクスであったな。よし、この王国の次期国王の名が決まった。ロゼルクス、ロゼルクス・アル・ド・エスペラントだ!」
「ロゼルクス……、いい名前ですわね。あなた」
「うむ。では祝宴の準備だ! ベルモンド、皆を集めて準備を。後は諸侯への文の準備もだ!」
かしこまりましたと恭しく礼をして、ベルモンドが部屋から出ていく。
部屋にはゼアトゥールとリズベッド、そして産まれたばかりのロゼルクスのみとなった。
すると、リズベッドが深刻な……どこか不安げな様子で静かに声をかけてきた。
「あの、あなた……?」
「何だ? どうした、リズ?」
リズベッドは一瞬躊躇し、逡巡するように険しい顔を作ったが、意を決したように口を開いた。
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