第1章

4/7
前へ
/12ページ
次へ
「実はこの子──」 「──魔力が感じられないの……!」 「バカな! 私とリズの子だぞ! そんなバカなことが……」  ゼアトゥールは慌ててロゼルクスの体に触れて、魔力探知の魔法を発動させる。  ゼアトゥールの手が白い輝きを放つ。  それと共に、ゼアトゥールの顔がみるみる内に青くなった。  魔力とは血統が物を言うものだ。魔力の高い者同士が交われば、その子どもは当然魔力が高くなる。  王族や貴族などは、昔からそうして魔力の質や高さを保ってきた。  だからこそ、王族や貴族は平民に比べて魔力が数段高く、高いからこそ存在を許されているのだ。  しかし、ロゼルクスは王族でありながら、その魔力が少しも感じられない。 「残念だがリズ、この子に王位を継がせるわけにはいかない。いや、この子はエスペラント王家に居ることすら許されない!」 「そ、そんな! ロゼルクスは私とあなたの大切な子なのですよ!」  魔力などなくても、ロゼルクスはゼアトゥールとリズベッドの血を分けた大切な子ども。  ゼアトゥールもそう思っていると信じていたからこそ、話したというのに……。  リズベッドの心は一瞬にして奈落の底へと突き落とされた。  ロゼルクスはエスペラント王家には居られない……。その言葉が意味することは、すなわちロゼルクスを捨てる、ということだ。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加