第1章

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 私がしわがれた声を絞り出すと、少年は怪訝そうに開いた目を細めた後、みてみ。といって男は窓を指さした。怪しい幾何学模様のカーテンがひとりでに開き、ぬるんと何かが巨大な物が横切った。それがサメだと認識するのにかかった時間は約一秒。  「お姉さんの庭にもサメいるの?」  予想外の光景に言葉もでない。首を横に振るのが精いっぱいだ。 「とりあえず、飲み物でもどう?」 固まっている私を気遣ってか少年が聞いてきた。  「いえけっこうです。あの……もう帰っていいですか」 そうしたら少年は爽やかな笑みを怪しい笑みに変化させ。 「まあそんなにあわてなくても……。せっかくきたんだから少し遊んでいきなよ。お姉さん?」 少年はパンっと両手を胸の前で鳴らすと。それを合図に散らかっていたテーブルの物が消失した。  「ルーレット。ポーカー。麻雀。すごろく……お姉さんどれが好き?」   「ギャンブルなんてやったことない」  正直に言うと、少年は「えー」と言って、軽く体を反らした。そんな人間いるのかと内心おもっているのだろう。  「じゃあこれは」  少年はポケットから何かを取り出し。私の方に投げ出した。あわててキャッチし見る。  これはサイコロ?いやダイスと言えばいいのだろうか。  角ばったフォルムと面に数字が描かれているのだが、面が六つ以上ある。 「全部で十八面ある」  男はそう言いながら、馬の親子が描かれた小さなお椀をテーブルの上に乗せる。 「お互いが同時に振り出して。ふたつ合わせて奇数がだったら、お姉さんの勝ち。どう?これなら簡単でしょ?」 「負けたら?」 「髪の毛残さず食べちゃう……っていうのは冗談で、普通に帰っていいよ。ただし、また次の満月の晩もここに来るっていうのはどう?」  いやそれもそれでいやだな。 そんな風に思っていると男は、勝てばいい。勝てばいい。小さくささやきだした。とても鼓膜にさわるので「うざい!」と一喝してやった。(少年は「ひい!」と驚いて目をつぶったどうも大きい声が苦手なのようだ。できることなら、耳元で「うあああ」叫んでやりたい)  そして、私は大きくため息を大きく一つした後。ダイスを握った。 「やるわ」 「おお、そう来なくっちゃ」 少年も鼻息を荒げてポケットからダイスを取り出して握る。 その時、壁にかかっていた古時計の鐘の音が大きく響いた.
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