”千里の道も一歩から”編_陸

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  ええ、と私も同意した。 「肩に力が入っていますね。 必死に自分の位置を確保しようとしているのが分かります。 学生のように分かりやすく優劣が出ないので それが不安なのかもしれませんね。」 そうなんだろうなぁ、と鏡は頭に手を置き 椅子を撓らせ、天井を見上げる。 「力を抜けば、周りが見えて 周りが見えれば、仲間もできる。 仲間のうちに、自分の位置もできる。 競争ってのは、確かに人の向上心を刺激するが 手を繋ぐ事で、人はようやく自分の居ていい場所が分かる。 どちらか一方ではダメだし どちらかに偏ってもうまく行かない。 吉永は戦うことでしか、自分を見出せなかった子なんだろう。 同期って、社会人にとって 数少ない、初めから許された場所なのに 彼らを拒絶することで、結局自分も見失っている。」
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