”千里の道も一歩から”編_陸

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  ええ、と私は頷く。 そして、周りの研修生たちも 普段の場所ならば、許せるような小さなスタンドプレーも 自分の足元がおぼつかないせいで、許せないようだった。 皆、一人ひとり話せば、 穏やかで、冷静な判断が下せる頭のいい子達だ。 出来がいい、と手放しで思える。 だが、吉永に対する態度だけは決して軟化することはない。 そして、 吉永にスタンドプレーもどんなに暗に注意しても、変わらない。 鏡はぼんやりと続けた。 「サラリーマンって、ただの歯車だって揶揄されるじゃん。 だけど、 1つの小さな歯車がなくても、あの大きな車は動かない。 子どもは車を操るドライバーに憧れるけど でも、実際、一番の功労者は、間違いなく小さな歯車たちだ。 大人の社会は、そんな縁の下の力持ちで成り立っていて 優劣なんて、決めれはしない。 比べることに、意味すらない。」
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