追憶

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 ――違う、絶対に違う。  言い聞かせるように、強引に円の唇を奪った。  勘違いするな。俺は、誰より円に憎まれて当然の人間だ。  だから、どれだけ体を重ねても、彼女の心だけは絶対に手に入らない。  知っていた、最初から。それでも構わないと思ったから、彼女を傷つけた。  それなのに今更、それが苦しいと思う。何故か。 「どうしたの、この程度でギブアップ? こんなのいつもに比べたら全然だよ」  長めのキスを終えて円を離すと、彼女は自力では立てないほど息を乱し、恍惚とした表情で俺を見上げた。 「まさか……そんなに気持ち良かったの?」  途端、円は顔を真っ赤にして伏せる。こんなことは初めてだった。  円はいつだって、喘ぎ声ひとつ上げなかった。いつも苦しそうな顔で、歯を食いしばって、俺を見ないように目を閉じて。 「見ないで……」  消え入りそうな円の声。その瞬間、どうしようもなく欲情した。  気づけばもう、歯止めがきかなくなっていた。嫌がる円を黙らせて、より深く彼女を求める。  ――欲しい。  ようやく気付いたそれは、間違いなく俺自身の感情。もはや復讐ですらなかった。  こんな気持ちは初めてだ。だけど、それは絶対に手に入らないもの。  快楽は生理現象。円が俺の身体を拒まなくなっても、俺を愛してくれている訳じゃない。  絶対、絶対、好きになんかなってくれない。どうしようもない、絶望感。
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