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翌日になると、どんどん後悔が大きくなった。
せっかくのテーマパークを一人でぶらぶらしていると、尚更思う。
円と会ったのは、そんな時。彼女も、梶川とはぐれてしまったらしく一人だった。
これだけ何度も円を傷つけてきた俺でさえ、昨晩のことは流石に堪えていた。
気まずい……そう思った時、円が少し興奮ぎみに話しかけてきた。
「そ、そういえば超絶絶叫コースターもう乗った?」
「……なにそれ」
「知らないの? お化け屋敷とジェットコースターの融合アトラクション。今人気なんだって!」
知らない。あまり興味もない。けれど、円はどうやらそれに乗りたいらしかった。
一緒に乗るか、と提案すると円が遠慮がちに……でも目を輝かせたので、俺は思わず笑ってしまった。
久し振りだった。思えば、いつも愛想笑いばかりしていたから。
超絶絶叫コースターとやらの行列に二人で並ぶと、隣で円がポツリと言った。
「……比呂くんが一緒に乗ってくれるなんて思わなかった」
そりゃあ、そうだろう。普段の俺達は主人と奴隷。憎まれ口ばかり叩く奴隷ではあるが。
「別にまぁ、暇だったしね。そっちこそ、いいの? 大嫌いな俺とで」
本当だけど、嘘でもある。少し前の俺なら考えられないが、その日の俺は円に対して少なからず罪悪感を抱いていた。それどころか、好意めいたものさえ。我ながらどうしてしまったのかと思うけれど。
「それはお互い様でしょ」
さらりと言った円に、俺への嫌悪を再確認する。当然だと理解はしたが、気分は重くなる。
「そうだな。いくら俺が鬼でも、あんなに乗りたそうにウズウズしてる奴を見捨てるなんて忍びなくてね」
あくまでも平静を装い、いつものように軽くからかうと、円ははっと赤面して俯いた。
やめてくれ。なんでそんなに可愛いんだ。
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