追憶

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 最も遡れば、父さんと良子さんの不倫から始まった一連のゴタゴタ。当初俺が思いもしなかったであろう結末を迎えはしたが、とりあえずは幕を閉じた。  終わってみればあっけなくて、どこか不安にさえなる。しかし、父さんが家族の再構築を望むのなら、俺から言うことは特にない。  一度は愛したはずの母さんを、結果的に死に追い詰めてまで一緒になりたかった人なんだろう。父さんがこれから良子さんとどんな家庭を築いていくのか、母さんの代わりに見届けようと思う。  きっと苦労するだろうな。同情はしない。それが父さんの選んだ道なんだから。  そもそも、俺には父さんの心配をしている暇なんてないのだ。  父さんが良子さんと離婚しないということは、円はずっと俺の妹だということ。よく考えたら、それって近親愛。血は繋がってないっていったって、そういう問題じゃない。やばい。  ひとつ屋根の下に、自分のことを異性として見てくる兄がいる円の気持ちを考えてみろ。  俺は早急に円への気持ちを吹っ切って、単なる兄に徹しなければならなかった。たとえ演技でも。
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