雪虫

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「だんなさま、お医者さまが見えました。 お通ししてよろしいですか?」 「あぁ…君か。 お通しして構わないよ。」 「だんなさま、実はその… 本日は…猪野先生がご都合がつかず… 助手の方が来られているのですが…」 「構わないよ。 この寒波を押して来られたのだ。 手ぶらでお帰り頂いては失礼というもの。 入って頂きなさい。」 珍しく口ごもるチヨを遮り 私は助手を中へと通させた。 実際医者など誰でも良かったのだ 診察など退屈しのぎでしかない。 どうせこの部屋から抜け出す事など 鼻から許されている筈もない。 其れならば できる限り違う人間と言葉を交わせる方が 私にとっては好都合なのである。
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