第壱章 うちと沖田はん。

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梨「うちが伍つの時にな、両親が死んでしもうて1人になったんよ。まあ、うちの母が芸者でうちも芸者の見習いやったから住む場所には困らんかったんやけどな。」 梨「せやけど、ある日な。芸者の仕事は汚いもんばかりでな、息の荒いおっちゃんに痴漢行為をされた時もあってな。うちは芸者の仕事にうんざりして店から飛び出して逃げたんよ。」 思い出すと触られた感触が蘇ってくる。 梨「やっと自由になれたと思うた。けど、仏さんはうちを自由にはしてくれなかった。」 梨「街を歩いてたらな、男の人達がうちの腕を掴んでな何処かに連れてこうとしたんや。今思えば、あの人達うちを売り飛ばそうとしてたんやと思う。」 沖「梨奈さん……」 梨「でも、そこでな、あの方が現れたんよ。あの方はうちを拾ってくれたんや。そんで、江戸に住むことになってハルはんに出会ったんや。」 沖「……大変でしたね」 梨「過去の話や。もう、なんも思っとらん。」 うそ。まだ本当は怖い。 そう思った矢先…… 梨「!?」 沖田はんがうちを慰めるように抱き締めた。 沖「本当は怖いくせに……また同じ事になったら怖いって思ってるんでしょう?」 梨「そ、そんなこと……」 沖「顔に出てますよ、怖いって……」 隠してるつもりやったのに……このお人本当にすごい……
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