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護衛達が付いて行くと言ったが、雪村はきっぱりと断った。護衛が『神の御使い』を抜けることは許さない。問題があるのは、自分だけだと、雪村は説得していた。
『死から来た者』に帰るのならば、やっと呼ぶことができる。瞬は、車の窓を少し開けて外を見る。
「海晴!」
声で呼ばなくてもいいのだが、きっと、海晴には届いている。
車を追うパトカーが、道のあちこちから飛び出してきた。周囲の道という道は、パトカーだらけになっていた。
「これ以上、車での逃走は無理かもしれません」
狭い路地にも、パトカーが待っていた。
車を降りると、武蔵が空間転移をかけていた。しかし、空間にも検問がかけられるらしい。検問の前で、強制的に地面に落ちた。
「走れ!」
検問に居た警官が、瞬を見つけて追ってきていた。今度は走って逃げるのだが、雪村も復帰したのか、自分の足で走り出していた。
境界線を越えなくてはならない。瞬は、見えない線を追っていた。
「……海晴!」
海晴は、瞬の危険を見ることができる。もし見えているのならば、瞬は、自分を見つけて欲しかった。
「海晴!」
瞬が、森に向かって叫んでいた。きっと、海晴はここに居る。
「瞬!」
森の中に、海晴が立っていた。そこが境界線なのだろう。
瞬が、海晴の横を過ぎると、倒れ込む。武蔵も雪村も、同じく倒れ込んでいた。警官は、境界線で立ち止まり、海晴に殴り返されていた。
「彼らは、犯罪者…引き渡しなさい!さも…」
言葉の途中で、海晴が警官を殴り飛ばす。海晴に殴られると、十メートルは後ろに飛んでいた。
「ここからは、『死から来た者』の領土になる。手出しするな!」
瞬が、走り疲れて休むと、隣で武蔵も休んでいた。
「海晴、素手だよね…」
瞬に向かって銃声が響く。海晴は、銃弾を素手で掴んでいた。
「…素手なんだよね。俺も、毎回骨を折られているけどさ、バカ力、加減なし」
海晴は、素手で銃弾を掴み、鉄でも殴り壊す。車も投げられれば、強靭な脚力も持つ。海晴の素手は、既に素手ではない。海晴は、自らが武器なので、武器を持たないだけなのだ。
このままでは、『神の御使い』の警官が殺されてしまう。
「海晴、もういいよ、帰ろう」
海晴は、まだ気が納まらないのか、警官を睨んでいた。
「御使い様を渡しません!」
渡すも何も、雪村は自分の意思でここに来ているのだ。
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