第1章

14/118
前へ
/118ページ
次へ
 武蔵が、構えて立っていた。 「ああ、噂に聞いたことがある。光流(ひかる)だろ、お前。光の使い手」  光の使い手で、光を熱に変えて襲ってくる。しかし能力よりも、意味のない服装で有名だった。ド派手な黒服。 「炎座の武蔵だろ?いいねえ、溶かしてみたいよ」  光流の手が動くと、壁に黒い筋が入っていた。光りの当たった壁が、燃えて炭になったようだった。 「壁、ケース、閉じる」  武蔵が何か言うと、瞬の周囲の風が消えた。瞬が、見えない壁に閉じ込められていた。 「虎!瞬を守れ!」  虎が瞬の回りに寄ってきていた。しかも、隙こそあれば、光流に襲い掛かろうとしていた。  武蔵が手から、ナイフを出すと握り締める。  光流が出す、熱線を避けて、武蔵がナイフで切りかかる。本気モードの武蔵の動きは、常人では見ることもできないくらいに速い。音速と呼ばれる、武蔵の動きだった。光流の腕と首から、血の筋が流れていた。  武蔵が戦っているのを、瞬は見ているだけなどできなかった。壁から出ようとしたが、出る事ができない。  瞬は、こんな時でも持ってしまっていたリュックから、ポラロイドを出すと、光流の写真を撮った。 「捕縛」  写真を足で踏みながら、今度は画像データを都築に送った。『面白い能力者が目の前で襲ってきています』こんな手は使いたくなかったが、それでも無駄に殺したくはない。 「武蔵、相手の動きを止めている間に、捕まえて」  光流、縄でも焼ききってしまう。武蔵が、手でおさえながら、どうするかと、考えていると、表にパトカーのサイレンが聞こえていた。 「瞬君…」  水元が走ってきて、光流を文字で拘束してくれた。 「都築さんに何を言ったの?緊急連絡で、捕まえとけと言ってきたよ」  水元が溜息をつきながら、光流を連れてゆこうとしていた。 「それと、表の【終末の旗】も拘束はしたから、安心して」  でも、【終末の旗】が壊滅したわけではない。しかし、それについては、『神の御使い』が、御使いを失ったのは【終末の旗】のせいだと、組織をあげて壊滅に取り組み始めていた。手始めに、警察の調査が行われ、手を貸した人物や、通報者など一斉取り締まりが行われていた。  御使い殺しに手を貸した者は終身刑、実行犯は死刑と、即決の判決が繰り返されていた。      【終末の旗】も、追い詰められてきたのかもしれない。 「おもしろい能力は誰かな?」
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

47人が本棚に入れています
本棚に追加